@mastersthesis{oai:niconurs.repo.nii.ac.jp:00001054, author = {石岡, 幸恵}, month = {Mar}, note = {application/pdf, 【研究目的】若年層の乳がん患者は,結婚や出産,妊娠などのライフイベント,子育てや仕事においても重要な時期であり,生活と治療の調整が必要となってくる.そして,若年層乳がん患者は全乳がん患者の中では罹患数が少なく,同病者の支え合いの力を目的としたサポートグループに参加しても,年齢差があると生活環境や価値観の相違があり人的サポートを得にくい状況がある.そこで,本研究は,若年層乳がん患者が折り合いをつけながら生活を送るプロセスについて明らかにすることを目的とした. 【研究方法】対象者は,研究協力の得られたがん診療連携拠点病院である3施設に補助療法のために外来通院中の20~40歳未満の乳がん患者で,研究の同意が得られた11名に半構成的面接法でインタビューを行い,データ分析を行った.データ分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach:M-GTA)を用い,質的帰納的に分析した. 【倫理的配慮】本研究は,新潟県立看護大学倫理審査委員会の承認を得た後に,各研究協力施設の施設長および看護部長に研究協力の依頼を行い,研究対象施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した. 【結果】対象者は,年齢35.4歳(標準偏差3.4歳)で,乳がん病期はI期が4名,IIa期が6名,III期が1名であった.データ分析の結果,生成された概念は43概念であった.そのうち40概念からは,意味内容の同類性から15カテゴリが生成され,さらに4コアカテゴリが生成された.説明力のある重要な概念については,カテゴリと同等の説明力を持つと位置付けた.治療中の若年層乳がん患者が折り合いをつけながら生活を送るプロセスは,告知され治療が始まり,『乳がん治療による生きにくさの認知の体験』と『生活しにくさにどうにか対応しようと模索する体験』を行き来しながら<なるようにしかならないという割り切り>を経て,『乳がんとともに今を大切に生きる』に至った. 若年層乳がん患者は治療が開始され,生じた後遺症や症状から<ただ耐えるしかない化学療法の副作用>と同時に,【仕事や家計より治療を優先しなければならない歯がゆさ】を感じていた.そこから【生活動作の中で敏感に感じるわずらわしさ】と【自分のせいで家族を悲しませる切なさ】【人前に出られないと感じる容姿の変化】を体験していた.また,【人前に出られないと感じる容姿の変化】があることで,【友人や職場の人に乳がんだと知れ渡ってしまう不安】を感じていた.それらに,【逃れられない死の恐怖を感じつつ家族と生活し続けたいという希求】と【同世代の人と同じようには想像できない未来の不確かさ】が関わっていた.これらの『乳がん治療後による生きにくさの認知の体験』をしていた.これに対して,【病前の自分と変わらない普通の生活をしたいという願い】から【治療と生活のリズムをつかみ調整しようとする努力】や【具合が悪い時のサポートの受け入れ】,そして【同病者の情報を集め自分の病状との比較】という,『生活のしにくさをどうにか対応していこうと模索する体験』を行っていた.これらは,【周囲の人の励ましに心理的な支えの実感】や【以前と変わらずに普通に接してくれる人の存在】,<治療をしやすいように後押ししてくれる職場環境>といった『治療中の生活を続けていくための周囲の支援』を受けて,治療中の生活を送っていた.このように試行錯誤しながら生活していく中で,徐々に<なるようにしかならないという割り切り>をして【病期を好転機と捉え充足した生活】や【以前の生活を取り戻しつつあるという感覚】,そして<今までの生活を見直しこれから生き続けるための方法を模索>といった『乳がんと共に今を大切に生きる』生活をしていた. 【考察】本研究の対象者は<ただ耐えるしかない化学療法の副作用>のように副作用をじっと耐えていた.人生経験が少なく,過去の対処経験に基づいた自分の考え方や対処を肯定的に捉えられ向き合えられない若年層乳がん患者は,このような未体験の副作用に対して肯定的に向き合うことは難しいといえる.そして,休職や退職による収入の減少や高額な医療費がかかる治療による家計への負担などがあり,自分の命のために治療を優先させなくてはならない状況に対して戸惑いを感じていた.また,【人前に出られないと感じる容姿の変化】があり,乳房切除や脱毛を他人に指摘されることが,自己の身体的イメージの様々な変化に必死に対応しようとしている感情が揺さぶられ苦痛となっていた.そして,自分が乳がん治療をしていることで家族の社会的な関係性が崩れてしまうことを懸念したり,本来であれば守るべき存在である子供や家族に守られ気を遣わせてしまっている自分自身を不甲斐なく感じたり,妊孕性に関わる問題など,自分の疾患や治療が周囲の人に影響を及ぼすことを気にかけていた. このような『乳がん治療による生きにくさの認知体験』をしながら,『生活のしにくさをどうにか対応していこうと模索する体験』をしていた.そこには生活が制限され自分らしさが揺らぐ不確かさを感じながらも,どうにか病気になる前の生活を取り戻したいという願いがあった.まだ自分はいいほうだと他者と自分を比べ,否定的な感情を抱いていた事柄を肯定的な感情に向かわせていた.また以前と変わらず普通に接してくれる人がいることが,病前と同じ社会に帰属し関係性を維持したい,今まで通りの自分でありたいと願う乳がん患者にとって支援として認知されていた.このような中で,これからの様々な可能性を少しずつあきらめて,若く乳がんになり再発のリスクや予後が悪いなどの不確かなことを今は考えずに<なるようにしかならないという割り切り>という思考の転換を行っていた.今の状況を割り切りこれからの充実した生活を送ることを考えていくことが,若年層の乳がん患者には必要であったのである.この思考の転換をしながら,今自分がコントロールできる範囲で過ごせている生活であることを認識し,『乳がんと共に今を生きる』へと至っていた. 【結論】看護師は若年層乳がん患者に治療早期から関わり,患者個々の治療と生活のプロセスを見極めた看護援助の必要がある.その中では,今までの体験のプロセスを振り返り,自身を向き合えるよう意図的な関わりを行うことが重要であり,看護師が患者のプロセスと今後の長い見通しをイメージしながら関わるスキルを持つことが必要である.そして早期から関われるような看護モデルを開発し,個別的に継続して看護介入していくシステムの開発が必要である. 【研究の限界】本研究は,対象者の仕事や家族などの社会的背景を限定しなかったことで,より広く若年層乳がん患者の生活プロセスを見ることができたが,データ数が限られているため一般化は難しい.今後社会的背景を考慮したデータを追加していくことが必要である., 平成25年度修了 新潟県立看護大学大学院看護学研究科 修士課程 領域: 臨床看護学領域 がん看護学 学位授与年月日:平成26年3月14日}, title = {治療中の若年層乳がん患者が折り合いをつけながら生活を送るプロセス}, year = {2014}, yomi = {イシオカ, サチエ} }