@mastersthesis{oai:niconurs.repo.nii.ac.jp:00001073, author = {大口, 洋子}, month = {Mar}, note = {application/pdf, 【目的】「豪雪という自然環境の中で暮らす後期高齢者のストレングス(強み)は何であるか?」といったリサーチ・クェスチョンのもと豪雪地帯に暮らす後期高齢者のストレン グスのあり様を明らかにし, その強みを高齢者看護へ生かすための示唆を得ることを目的とした. 【研究方法】本研究は高齢者のストレングスの現象を記述する質的記述研究である.特別豪雪地帯に指定されている中山間地にあるB町・C地区の高齢者を対象にしたサロン事業参加者に研究の趣旨を説明し同意が得られた10 名を対象とした. Rapp ら(2014) が示したストレングスモデルを基にインタビューガイドを作成し自宅を訪問しての面接調査を行った.最初に基本属性として年齢,家族構成,生活圏,主観的健康観を聴いた後,豪雪地帯で暮らしてきた生活史と現在の暮らしについて語ってもらった.続いて,個人のストレングスの要素とされる能力,自信,願望について,環境のストレングスの要素である環境資源,社会関係,高齢者の力が発揮され居場所となる機会について質問した.分析はIC レコーダーから逐語録を作成して,最初に個人のストレングスの背景となる生 活史を把握し,次にストレングスの要素となる個人の願望・能力・自信と環境の資源・ 社会関係・機会について語られた文脈から最小単位の文章でストレングスと解釈できる内容をキーセンテンスとして抜出し,さらにコード化を行った.そして,ストレングスの要素毎に意味内容の類似性に従い抽象化を重ね,<サブカテゴリー>,≪カテゴリー ≫を生成した. 【結果】研究対象者は男性2人・女性8人で,年代は70 歳代後半4人,80 代前半2人,80 代後半4人で,平均年齢は81.9 歳であった.生活史の聴き取りからはいずれも戦中・戦後の苦難を生き抜いてきた豊富な生活史が語られた.ストレングスとして語られた全体のコード化は49 ,コード数143, サブカテゴリーは24 ,カテゴリーは17 生成された. 個人のストレングスの【自信】は,<過去の苦難から得た自信>,<健康で動ける 自信>,<家族を育んできた自信>,<地域の世話役をしてきた自信>の4つのサブカテゴリーを抽出し,≪過去の苦難から得た自信≫,≪健康で動ける自信≫,≪家族 を育み地域を世話してきた自信≫の3つのカテゴリーを生成した. 【能力】は,<米や野菜の生産とその保存・加工技術>,<雪の対策と活用>,<大きな病気の体験がない>,<健康づくりに取り組む>,<自己実現と他者との交流>,<地域に尽くす> の6つのサブカテゴリーを抽出し,≪米や野菜の生産とその保存・加工技術≫,≪雪の対策と活用≫,≪健康の維持向上≫,≪自己実現と社会貢献≫の4つのカテゴリーを生成した.【願望】は,<自立してこの地で暮らし続けたい>,く施設入所を希望する>,<苦しまずに迷惑をかけないで逝きたい>,く地域の伝統やつながりを次世代 へ継承したい>の4つのサブカテゴリーを抽出し,≪自立してこの地で暮らし続けたい≫,≪ひとに迷惑をかけないで逝きたい≫,≪地域の伝統やつながりを次世代へ継承したい≫の3つのカテゴリーを生成した.環境のストレングスの資源は【自然環境資源】の枠組みで分析し,サブカテゴリーと同様で≪田畑・山林の資産≫,≪雪国の自然の恵み≫の2つのカテゴリーを生成した.【社会関係】は,サブカテゴリーと同様で≪家族,親戚,恩師や近所の大との交流による支え≫,≪年長者として地域に関わることによる人望≫の2つのカテゴリーを生成した. 【機会】は,<自宅が交流の場になる>,<墓参りでの語らい>,<集落の 公民館の集い>,<中央の会への参加>,<健康づくり事業への参加>,<ボランテ ィア,趣味の集い>の6つのサブカテゴリーを抽出し,≪近所付き合い ≫,≪生きがいや健康づくりの集い≫,≪ボランティア,趣味の集い≫の3つのカテゴリーを生成した. 【考察】後期高齢者は戦中・戦後の苦難を乗り越え,若い時から培ってきた米や野菜の生産に今も現役で力を発揮できている自信と能力を身に着けていた.そのうえ,健康体操や水中運動などに積極的に参加し健康づくりに励んでいる姿もあった.また,地域の 伝統やつながりを次世代につなげたいという地域貢献にも力を発揮し,心豊かな生活を送りながら,家族や地域に貢献することを生きがいとしていた.高齢者の健康目標は高齢化の進展と共に余命の延長から生活機能の自立へと,さらには,社会のなかで高齢者がどれはどの役割が果たせるかを目標とするプロダクティビティ(productivity) の増進へ発展するといわれている.対象となった高齢者は,保健行動(self-care) を含めた生産性あるいは社会貢献と訳されるプロダクティビティに関わるストレングスを身につけていると考える.こうした個人のストレングスは,米や野菜の生産に現役で従事できる地域性も影響していると考えられる.対象者は,豪雪 の厳しさよりも四季の移ろいの美しさ,冬期の寒さや雪を利用した農産物の保存・加工の知恵,女性は家に籠っての趣味への取り組みといった雪国ならではの恩恵を享受していた.また,対象者が居住する集落は血縁・地縁のつながりの伝統が未だ残って いる集落であり,親密な交流が高齢者の精神的支えにもなっていると推察された.「元気なうちは愛着あるこの地で自立して暮らし続けたい」といった願望の一方で,「介護が必要になったら施設入所を希望し,最期は苦しまず家族に迷惑をかけないで逝きたい」という日本人独特といわれる「望ましい死の迎え方」に対する心情を述べる者もいた. この様に研究対象者は豊富なストレングスを持ち得ていたが,直接的な質問では「自信や能力なんてない」と自らの強みを自覚していない様に感じられた.ストレングスを高齢者看護に生かすには,その大がもつ強みをフィードバックして気付いてもらったり,アセスメントにストレングスの視点を取り入れ,その人の強みを引き出し強化するアプローチが必要である. 【結論】今回の研究を通じて,研究対象者はこれまでの暮らしから得てきた能力・自信・願望 の個人のストレングスと,雪国の自然環境と文化,人々のつながりといった環境のストレングスを豊富に持ち得ていることが明らかになった., 要旨, 平成27年度修了 新潟県立看護大学大学院看護学研究科 修士課程 領域: 老年看護学 学位授与年月日: 平成28年3月10日}, title = {豪雪地帯に暮らす後期高齢者のストレングスの把握}, year = {2016}, yomi = {オオクチ, ヨウコ} }